協会からのお知らせ

(公財)古都大宰府保存協会から、催事や活動の様子などをお伝えします。

2000年1月

2000年 01月05日
太宰府の歴史・文化のご紹介 「太宰府の木うそ」
 
太宰府の歴史・文化のご紹介
「太宰府の木うそ」

※本ページは、2023年1月5日(木)~2月5日(日)に開催しました大宰府展示館におけるトピック展示「太宰府の木うそ」の紹介を転載しております。 

 
 大宰府展示館では、太宰府を代表する伝統工芸品である木うそについて、由来や歴史を紹介するトピック展を開催いたしました。
 太宰府木うそ保存会で活動されている辻野哲朗様にご協力いただき、制作された様々なサイズやバリエーションの木うそを一堂に展示すると共に、原木から完成するまでの工程などもご紹介いたしました。


■ 木うそについて

 「木うそ」とは、鳥の「鷽」が木にとまっている様子を表現した木彫りの作品で、太宰府天満宮で古くから続く伝統行事「鷽替え神事」で使われています。
 太宰府天満宮と周辺の氏子たちによって守り受け継がれてきた木うそは、原材料となるホオノキやコシアブラの木をノミで彫りながら、跳ね上がった羽をはじめ、頭や目、口ばしなどの特徴が巧みに表現されています。
 特徴的な愛らしいデザインの木うそは、昭和58年(1983)には福岡県知事指定特産民芸品に指定されるなど、太宰府を代表する作品として多くの人々に親しまれています。


木うその制作工程 制作:辻野哲朗様


■ モデルとなった鳥 鷽(うそ)

 鷽はスズメ目アトリ科の鳥で、成長した体長は16㎝ほどでスズメより少し大きく、「フィーフィー」と笛のような美しい声で鳴きます。体は主に黒色・灰青色をしていますが、雄は頬から喉にかけて美しい紅色をしており照鷽(てりうそ)とも呼ばれます。ユーラシア大陸中北部に生息しており、日本では主に北海道や本州の山地にある針葉樹林などに生息し、冬になると南下して低地の林などでも見られます。
 太宰府では「菅原道真公を祀る太宰府天満宮で工事を行った際、材木を食い荒らす虫が出て工事が遅れたが、どこからともなく鷽が出現して虫を退治してくれた」という伝承や「太宰府天満宮の本殿を造営する際、スズメバチが巣をつくり仕事ができなくなった時、鷽が群れでやってきて蜂を追い払った」という言い伝えがあり、護り鳥として大切にされています。

 
 
鷽〔雄〕

桜の新芽をついばむ鷽〔雌〕
写真撮影・提供 大野城市下大利 児嶋正人様



■ 鷽替え神事
 毎年1月7日の夜に太宰府天満宮の境内で行われる神事です。集まった参加者たちは、明かりが消された暗闇の中で「替えましょ、替えましょ」と掛け声を掛けながら、手にする木うそをお互いに交換していきます。
 これは1年間についた全ての嘘を天神様の誠心(偽りのない心)と取替えようとする神事で、嘘を誠(真実・誠実)に替えるという意味や年の凶を嘘にして吉に替えるという意味があります。神事で手にした木うそは、1年間の幸福を祈って自宅の神棚などに上げられます。
 太宰府における鷽替え神事は、貝原益軒が貞享2年(1685)に記した『太宰府天満宮故実』に開催の記録が見え、その後、遠方からも大勢の参加者がやってくる大規模な行事として江戸時代を通じて盛んに行われるようになりました。全国に広まった鷽替え神事は、東京都の亀戸天神社や大阪府の道明寺天満宮、県内では久留米市の北野天満宮など全国各地の神社で行われています。

■ 鷽替えの記録映像 (←ご覧になりたい方はこちらをクリックください)
 太宰府市では平成25年度に市内の無形民俗文化財を調査し記録映像を保存し、公開しています。
 どうぞご覧ください。



伝統を受け継ぐために
 長い歴史を持つ太宰府の木うそですが、製作技術の伝承や原木の育成・確保などのため平成10年(1998)に太宰府木うそ保存会が設立されました。地元の太宰府商工会が協力し、後継者育成や技術交流を目的とした技術講習会、市内の北谷や石穴地区において木うその原材料であるコシアブラの育成活動、多くの人々に木うそに触れてもらうための絵付け体験教室などを継続して行っています。
 また、平成23年(2011)には太宰府市民が未来へ向けて守り育てていきたいと思う遺産・太宰府市民遺産の第1号に認定され、木うそ作りの伝統的な慣習や太宰府ならではの文化を次世代に伝える活動に取り組まれています。

太宰府木うそ保存会 ホームページ (←ご覧になりたい方はこちらをクリックください)
太宰府市民遺産 ホームページ (←ご覧になりたい方はこちらをクリックください)


〔参考文献〕
・太宰府天満宮ホームページ    
・太宰府木うそ保存会ホームページ 
・『太宰府百科事典』太宰府天満宮編 太宰府天満宮

・『飛梅』44号、57号、58号 太宰府天満宮